老後になると、家のなかでもリスクがつきまといます。家を建築するときに、老後のことも考えていないと、将来的に暮らしにくい家になってしまうでしょう。今回は、老後でも失敗・後悔のない家づくりのコツを、メリット・デメリットとあわせて紹介します。
老後でも住みやすい家のメリット
老後でも住みやすい家を持つことは、多くのメリットがあります。ここでは、老後でも住みやすい家のメリットの一部を紹介します。
身体機能が落ちても生活がしやすい
年を重ねると、気になるのが身体的な能力の低下です。老後では以下のような身体機能の変化が起きます。
- 筋力の低下
- 視力の低下
- 回復力の低下
- 温度を感じる能力の低下
- 心のコントロール能力の低下
- 排泄回数の増加
老後でも住みやすい家にすることで、体や心にとっても無理のない生活ができるようになるでしょう。例えば、ちょっとした段差による転倒や、階段から転落するリスクをおさえられます。
足が不自由になっても移動がしやすい
老後でも暮らしやすい家は、広いスペースを確保していることが多く、車イス生活になっても安心して住み続けられます。身体的に楽になると、精神も安定しやすくなります。
廊下の幅を広くしたり、ドアは車イスでも開けやすい引き戸にするなど、工夫次第で生活の質が大幅にアップ。介護者にお世話してもらうときも、お風呂やトイレに広いスペースがあると便利ですよ。
小さな子どもがいても安心
老後でも暮らしやすい家は、小さな子供に対しても効果を発揮するでしょう。例えば、体を支える手すりや、フラットな床による転倒防止によって子どものケガ防止につながります。妊婦さんの場合でも、転倒防止によって安心してすごせるようになります。
老後でも失敗・後悔のない家の6つの条件
老後でも暮らしやすい家にすることは、家づくりの重要な課題です。自分自身や家族の安全、健康を考えるとともに、住みやすい家を選ぶことが重要です。老後でも失敗・後悔のない家づくりの条件を紹介するので、ぜひ参考にしてください。
①バリアフリー住宅にする
老齢にともなう身体的な制限や障がいを考慮して、バリアフリーの家を設計しましょう。例えば、段差のない平坦な床、車イスが通れる広い廊下、体を支える手すりの設置などがあります。これにより、転倒や怪我のリスクを減らし、自分自身や家族の安全性が向上します。
また、温度差のない住環境も大切です。体の体感温度が分かりにくくなる老後は、ヒートショックの危険性が上昇します。特に、浴室と脱衣所は暖かく保てるように、高断熱にしたりエアコンを設置したりするようにしましょう。
以下の記事で、バリアフリー設計について詳しく解説してるので、検討している方は参考にしてみてください。
また、2階建てにするよりも、平屋住宅のほうがバリアフリー設計がしやすいです。以下の記事で、シニア向けの平屋を詳しく解説してるので、気になる方は読んでみてください。
②広すぎない・狭すぎない間取りにする
広すぎる家は、掃除や家事の手間が増えるため、なるべく避けるようにしてください。病気やケガなどで何かあったときに、助けを呼びにくいというデメリットもあります。
しかし、逆に狭すぎると車イスが通れなくなり、介護者も不便を感じてしまいがちです。広すぎずに、コンパクトに間取りをまとめることで、生活のしやすさが向上します。
寝室からトイレ・浴室が近くなる間取りにするのもおすすめ。トイレへの移動や、お風呂の介護をされるときの移動距離が短くなります。
また、回遊動線(円を描くような、行き止まりのない動線)も利便性が高い間取りです。回遊動線は、筋力を維持する歩行トレーニングもしやすい間取りになります。
③ランニングコストが節約できる設備を選択する
建設後30年でかかる家のメンテナンス費は、500万円程度といわれています。40年後以降は、もっとお金が必要になるということです。
ランニングコストを節約する際は、以下のポイントをおさえて設計しましょう。
- 家の形をシンプルにする
- 定期的に点検・修繕をおこなう
- 修理しやすい住宅設備にする
- 耐用年数が長い塗料・素材を使用する
家の修繕をしないでいると、雨漏りや外壁の崩落、ときにはシロアリが発生するおそれもあります。家の寿命を延ばすためにも、定期的にメンテナンスをおこないましょう。
④災害に強い家を建築する
災害に強い家とは、地震や水害などの自然災害に強い家のことを指します。災害に強い家を作るには、土地の選定が大切です。強い地盤に加え、高台に建設が可能な家が理想的でしょう。
耐震性の強い家にする場合、なるべくシンプルにしてください。例えば、長方形や、正方形などの形は地震の負荷を分散しやすいとされています。逆に、凸凹とした形の家は地震の力を分散しにくく、構造に工夫が必要です。
また、屋根の素材に軽量性の高いもの(コロニアル・ガルバリウム鋼板など)を使用することで、建物への荷重を減らせます。ガレージハウスを備えた2階建ての建物は、力を分散しにくいので、開口部分に建物を補強する鉄骨などを組み込みましょう。
⑤経済的に無理のない計画をたてる
家の修繕などのために貯蓄をしている人は、1割程度といわれています。老後を考えたうえで、家にどのようなお金がかかるのか把握しなければ、老後に資金が足りなくなるおそれがあります。
家の修繕費以外にも、火災保険などの保険代金、固定資産税も考慮しなくてはなりません。どのような規模の家を建てるのかで、税金や修繕費は変わってくるため、手持ちの資金と合わせながら設計をしましょう。
⑥社会インフラが整っている地域を選ぶ
これから土地選びをする方は、利便性の高い立地を選ぶといいでしょう。以下の点に注意した土地選びをしてみてください。
- 自治体で、どのような高齢者向けサービスがあるのかチェック
- スーパーや病院が徒歩圏にあるか調べる
- 交通アクセスを調べる
- 交流の場(コミュニティ)があるか調べる
- 適度なご近所付き合いがある場所(防犯性が高い)
地域の魅力も重要な要素です。老後の家が、交通インフラや医療施設、ショッピングモールなどに近いと、日々の生活がより便利になります。また、自然環境や公園、コミュニティもチェックすることで、充実した地域での生活を楽しむことができます。
老後でも住みやすい家のデメリット3つ
老後でも暮らしやすい家には、デメリットも存在します。建築をする前に知ることで、導入する設備やニーズを考えて設計ができるようになるでしょう。
①費用が高額になりやすい
バリアフリー設備(手すりや暖房など)を導入することで、通常の住宅よりも高額になる場合が多いです。後からバリアフリー設備を導入する場合には、リフォームによる負担がかかる場合があります。
また、バリアフリー環境はスペースが必要なため、広い敷地面積が必要になるケースも。土地代を節約するためにも、間取りはコンパクトにするようにしましょう。
②玄関や掃き出し窓から砂・ホコリが入りやすい
段差のないフラットな玄関、掃き出し窓を設置する場合、ホコリや砂が侵入しやすくなります。例えば、車イスについた砂、風による砂ぼこりの侵入などを受けやすいです。玄関の場合は、少し奥まった場所にドアを設置したり、壁を備えつけることで砂・ホコリの侵入を軽減できるでしょう。
③設備によっては手狭になる場合もある
バリアフリー住宅はどうしても広さが必要です。広さを優先した結果、収納スペースの削減やバルコニー、庭などをなくすことになったり、部屋数が少なくなる可能性もあります。対策として、造作を作成して収納スペースを増やすことも検討しましょう。
老後でも後悔・失敗のない家で暮らそう
老後に後悔のない家を持つためには、経済的な計画、バリアフリーの住まい、地域の魅力など、将来を見据えた賢明な判断が必要です。将来の不安がないように、自分自身や家族と共に充実した老後を迎えられるように、じっくりと検討してから計画を立てましょう。
老後でも住みやすい家のメリット
- 高齢者が安心して暮らせる
- 足が不自由になっても動きやすい家になる
- 子どもや妊婦さんにも効果的
老後は身体的、精神的にもおとろえがやってきます。老後でも住みやすい家にすることによって、万が一の場合でも安全性の高い暮らしができます。
老後でも失敗・後悔のない家の6つの条件
- バリアフリーの家を建てる
- 間取りは、広すぎず狭すぎずに設計
- ランニングコストがかかりにくい家にする
- 自然災害に強い家にする
- 資金的に余裕のある計画を立てる
- 利便性の高い立地を選ぶ
バリアフリー設計にすることによって、老後も暮らしやすい家が手に入ります。費用は資金と相談しながら節約しつつ建築していきましょう。
老後でも住みやすい家のデメリット
- 建築費用が高額になる場合もある
- 砂・ホコリが侵入しやすい
- スペースに余裕がなくなりやすい
バリアフリー住宅は、コストパフォーマンスが悪くなりがちです。予算によっては広い土地や設備、どれかを節約しなければならなくなる可能性があります。